音楽創作に取り組み、心地よいリズムで暮らす家|イエの探求 | UNSTANDARD(アンスタンダード)
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2023.11.3

音楽創作に取り組み、心地よいリズムで暮らす家|イエの探求

音楽創作に取り組み、心地よいリズムで暮らす家|イエの探求

音楽創作に取り組み、心地よいリズムで暮らす家|イエの探求

 

一番その人らしさが現れる家の空間。“好き”が詰まった“場”には、ちょっとした工夫や色合わせのこだわりが反映されているはず。そんなそれぞれ違った個性を持つ自宅の内装やインテリアについて話を聞いていく企画「イエの探求」。

 

2台の鍵盤が存在感を放つ、この部屋の住人は、京都発インストゥルメンタル・バンド「jizue」のピアニスト片木希依さん。音楽を生み出すアーティストとして、そして京都に暮らす1人の女性として、心地よく暮らすヒントをお聞きした。


いつも側に音楽がある

2台の鍵盤が置かれている机は、職人である父が手掛けたもの。父と兄は金箔職人、母の実家はあんこ屋という “手に職を持つ” 家庭で育った片木さん。

 

「母が保育士だったので家にピアノがあり、あまりにも楽しそうに弾いていたので音楽教室に連れて行ってくれたみたいです。そこからピアノが好きになり、高校は公立の音楽高校、大学も音楽学部へ進学しました。

師事していたピアノの先生が音楽関係の仕事やバンドをしていて、おかげで様々なジャンルに興味を持てたんです」

 

大学では、電子音楽を専攻。再現の美を追求するクラシックとは違い、音楽を分解して新しいものをつくる創作の面白さに惹かれたそう。

その頃出会ったのが、jizueのメンバー。片木さん以外のメンバーが組んでいたバンドからボーカルが脱退したタイミングだった。

 

「ボーカルより楽器が主張するタイプのバンドだったので(笑)、私が加入してインストバンドになったのは自然な流れだったのかもしれません」

 

結成して10年ほどは音楽だけでは食べて行くのは難しく、日中はピアノの先生の仕事、夜はスタジオに集まって朝まで音楽活動。

週末は東京までライブに行くというような生活を送っていたそう。

 

「それでも家族は私が音楽をすることをずっと応援してくれて。

それぞれが手に職を持つ人たちだから、気持ちを理解していてくれたんじゃないかな」


コロナを機に気づいた、暮らしの大切さ

 

結成から10年が経ち、少しずつ音楽の仕事で暮らせるように。「ようやく普通の生活ができるようになった」という片木さん。機材が部屋の大半を占め、窮屈だった家を引越したのが2年前。

 

「コロナの影響で家での録音が増えて、もっと居心地が良い家に住みたいと思うようになり、今の家に引越しました。音楽業界自体が苦しい時期だったし、プライベートもあまりうまくいってなかったんです。それで心地よい空間で暮らしたいと思って、自分のお気に入りをひとつずつ大切に集めていく部屋にしました」

 

カラフルな色合いが楽しいベッドカバーは、NY発のブランド「Anthropologie(アンソロポロジー)」のもの。

 

「音楽機材は黒やアイアン製が多いので、殺伐した感じにならないようにカラフルなものを選びたくて。こういうのが欲しいなっていうぼんやりしたイメージが頭の中にあって、ネットで探して見つけました。カラフルだけど穏やかさもある、自分の好きな色のトーンがあるんです」

 

家に飾られた絵にも、片木さんの好きな色が使われている。こちらは花や自然物をモチーフに描かれた、京都在住の作家・藤本純輝さんの作品。以前から部屋に絵を飾りたいという思いがあり、引っ越してすぐに購入したそう。

 

 

部屋には、花言葉の日めくりカレンダー、月の暦、「まいにち漢方・体と心をいたわる365のコツ」(著 櫻井 大典/ナツメ社)など、日々の暮らしを豊かに過ごすヒントがたくさんある。

 

「1日の始まりにカレンダーをめくって、心やからだのことが書かれている本を読んだりすることで、『今日はこんな日なんだな』と確認できたり、『季節の変わり目だから身体に気をつけなくちゃ』と気づいたり。

忙しい日々の中でも、1日1日を大切に過ごせるように意識しています」

 

 

 

部屋のベランダからは、山に落ちる夕日を眺めることもできる。

1日頑張った自分へのご褒美に、夕日を見ながらビールで乾杯。そんなひとときが楽しい。

 


内と外から「ととのう」暮らし

コロナによって生活の大切さに気づき、住む環境を変えた片木さん。自分の内側と向かい合う時間を経て、茶道やランニングなど新しいことにチャレンジする心のゆとりも持てるように。

 

「オーケストラ編成でライブを行った際に、フルコンサートサイズという一番大きなグランドピアノを弾いたんですが、上手く弾きこなせなくて。

めちゃくちゃ準備して挑んだのに、背中の筋力の持久力と集中力が全然追いつかなかったんです」

 

※『-jizue 15th Anniversary Special- jizue orchestra with Style KYOTO管弦楽団』 より「grass」のライブ映像

 

もっと体力と持久力をつけなくてはと始めたのがランニング。友人たちとグループラインをつくり、京都の景色を楽しみながら走っているそう。

 

「その日の朝、来れる人が集まって走っています。よく走るのは二条城の周りか、鴨川に出て出町柳あたりまで走って折り返してくるコースです。

京都御所や東寺など名所を目指して走ることもあります。今年は京都マラソンを完走しました」

京都マラソンを走り切った片木さん

年明けには、再びオーケストラ編成の公演があるため、しっかりと走り込んでいるとのこと。もう一つ新たに始めた茶道も、きっかけは音楽活動で感じた「日本のことをもっと理解したい」という想いから。

 

「海外のライブで出会うスタッフやお客さんに京都出身だと話すと、日本の伝統文化について聞かれることが多かったんですね。

でも全然答えられなくて。恥ずかしかったし、何よりこんなに身近にあるのに知らないまま過ごすのは、もったいないと思ってお茶を習い始めました」

 

実際に稽古を始めて感じたのは、所作を通じて「ととのう」感覚が持てるということ。

 

「考え事が多くて心がせわしない時は、呼吸や姿勢が乱れてお手前のちょっとした動作が雑になってしまったり、流れに沿ってすべきことが止まってしまったり。

同じ動作を繰り返すからこそ、自分が今どういう状態なのか気づくことができるんです」

 

また、整えられた空間に身を置くことによって、片木さん自身も「より丁寧に暮らしたい」と思えるようになったそうだ。

「季節を忘れて忙しく過ごしている時に、お稽古に行くとハッとさせられるんです。時節に合った掛け軸やお花、和菓子を見て、『あぁ、秋が来たんやな』と変化に気づく。

茶道を始めてから、四季のうつろいや自分自身の変化もしっかり感じて生きたいと思うようになりました」

 

暮らしの変化によって、創作活動にも変化が起きている。

 

「自分の内面が豊かになることで、音楽だけでなく、私個人が発信することに共感してくれる方が増えてきた気がします。

ひとりの女性として思うことや考えを発信することで誰かが安心したり、新しい選択肢が増えるきっかけになればいいなって」


パートナーと住むことで変化する日常

2023年に結婚をし、パートナーが暮らす東京と京都の2拠点生活がスタート。互いに行ったり来たりしながら、一緒に暮らしているそう。

以前は、夜型生活だった片木さん。結婚後は、相手の生活ペースに合わせるうちに朝型の生活に変わってきたのだとか。

 

「パートナーは何よりも寝るのを大事にする人なんです。逆に私は寝る時間を削ってでもやりたいことをするタイプなので、その違いに難しさを感じていたんですが、相手に合わせてちゃんと寝るようにしたら、1日元気で過ごせるようになりました。

制作に没頭する時は、ついつい睡眠もご飯も蔑ろにしがちなので、習慣化できるように頑張っています(笑)」

 

2人で住む東京の部屋は、仕事で知り合ったインテリアコーディネーター村上直子さんにアドバイスをもらって整えた。

 

「私たちの生活パターンを聞いて、男性脳・女性脳とか、得意不得意なことを加味して家具の配置や収納の仕方を提案していただきました。

旦那さんが片付けが苦手なので、干したハンガーをそのままクローゼットにしまう、大きなカゴに入れるだけなど、動作を減らしてシンプルな動線で住めるようにしていただいたんです」

 

性格や価値観の違いを少しづつ埋めていき、一緒にいる時間の中でお互いに心地よく暮らせるポイントを見つけてきたという2人。

2年後には、パートナーも拠点を移し、京都で暮らし始める予定で京都御所の近くにマンションを購入した。

選ぶポイントになったのは「気が良いところ」。

 

自宅の近くには京都らしさを感じられる場所がたくさんある

「京都って季節ごと、地域ごとに地の神様のお祭りがあるし、祖父母も親もそういうことを大事にしているのを見ているから、自然と目に見えへん何かに守られてる感覚が身についているというか。

実は今住んでいる東京の家も気が良いことで有名な場所なんです(笑)。旦那さんもそういうのを笑いながら受け入れてくれるタイプの人なんで、『じゃあ御所の近くにしよう!』って」

 

さらにその先は、グランドピアノが置ける広い一軒家に住みたいと話す片木さん。

窓から自然が見える、眺望の良い場所に家を建てたいとのこと。

 

「京都は都市の機能がありながらも、どこにいても山が見えるし、鴨川がある。地元というのもありますが、そこが気に入っているんです。いつかは広い一軒家に住みたいですね。旦那さんがめっちゃサウナ好きなんで、そこにサウナがついていたら理想的です!」

 

住まいが変われば、暮らしが変化する。暮らしがが変われば考えや想いもまた、変化する。

片木さんが理想の住まいに住んだ時、果たしてどんな音楽が生み出されるのだろうか。

NONDESIGN

STAFF
[Text] YUKARI MIKAMI