一番その人らしさが現れる家の空間。“好き”が詰まった“場”には、ちょっとした工夫や色合わせのこだわりが反映されているはず。そんなそれぞれ違った個性を持つ自宅の内装やインテリアについて話を聞いていく企画「イエの探求」。今回はヴィンテージ家具とryoheiさんの趣味が混ざり合ったお住まいが印象的なmarieさん宅を訪問。
家具選びから子育てや働き方、趣味など通して2人のライフスタイルを紐解く。
あえての違和感で空間を編集
marieさん・ryoheiさん夫妻は、繁華街を抜けた公園や自然豊かな木々などが立ち並ぶ、閑静な住宅街に自宅を構える。
2歳の凪君との3人暮らしでも申し分のない広さ。リビングにはシンプルで暖かい色合いの家具を中心に、ユニークなデザインの小物が散りばめられている。
ファッション業界に従事する2人のセンスが光る家具選び。そのこだわりはなんだろうか。
ryoheiさん「高価なものや、とにかく古ければいいという訳ではなくて。元々、古着好きなこともあって中古っていう概念に全く抵抗がないんですよね。状態や雰囲気、質感などが良ければ、ヴィンテージでも中古でも分け隔てなく買ってますね」
リビングを見渡すと経年変化するチーク材のヴィンテージ家具の色合いも統一されており、一点一点に妥協しないこだわりと、古着的な価値観を感じさせる。
marieさん「正直、私たちはインテリアに精通しているわけではないので、チグハグにならないように色味の統一感だけは大事にしてます。主にヴィンテージ家具を中心に、ブラウンとアイボリーで揃えています」
ryoheiさん「ブランド家具だったり、同じ系統や年代のもので統一しすぎるのも僕たちらしくないかなって。実際に何か買う時は、自宅を思い浮かべながら『まぁ合わないなら、それもまた面白いか』という風にラフに考えています。物を買うハードルを高くし過ぎない方が良いものと出会えた時にお迎えしやすいので。整えられた綺麗さより、ある程度のズレがあったほうが面白いかな」
と家具選びのこだわりを語る。
スタイリストという職業柄、年代やブランド、アーティストなどで統一するのではなく、北欧の家具にアメリカンな要素の強いストリートな小物を合わせるなど、自分たちの“好き”をミックスし、あえて違和感を作ることで上手く空間を編集している。
観葉植物も置かれたリビングには、存在感のあるL字のソファをはじめ、優しい色合いの家具が多く、暖かな印象を受ける。
marieさん「これまでは2.5人がけのソファを使用していたんですが、あんまり気に入ってなくて。リビングは日差しが入りにくく、このサイズ感で重たい色味だと、部屋全体が暗い印象になるので、ずっとアイボリーのソファを探していたんです。L字以外にも自由に形を変えられるので、これから増える家具によって色々とアレンジもできます」
と念願叶って購入したという。
ベーシックかつこだわりのあるデザインの家具に囲まれるリビング。その多くは二人で話し合って決めるそうだが、ユニークなアート作品や小物は、ryoheiさんのチョイスが多い。
中でも目を引くのが、お気に入りの家具だというパナマハット型のランプシェードだ。
「専門学校時代の同級生が沖縄で運営している『ORRS』ってお店が、東京でポップアップを行った時に購入しました。彼はパナマハットに惚れ込んで、本場エクアドルの職人さんに会いに行くほど熱量がある人なんです。
このランプシェードも現地では、そこまで物珍しいものじゃないらしく、だからこそ現地の魅力を知ってもらう意味でも凄く素敵なアイテムだなってことで、日本でも展開しようと決めたらしいです」
古着を愛するryoheiさんらしく、ものの背景に愛着を感じるアイテム選びだ。
“職業柄”では片付けられない“偏愛”部屋
お子さんの書いた絵やイラストレーターの作品が飾られた廊下を抜けると、一際目を引くのがryoheiさんの靴が保管されているお部屋。その数なんと400足以上。ナイキやニューバランス、アディダスなどのスニーカーに加えて、上質な革靴やブーツなどが部屋一面を埋め尽くしている。
さらには、店舗の在庫ストック用に借りている倉庫にも保管してあり、自宅にあるのはほんの一部だという。
marieさん「靴と靴箱を分けて保管していて、わざわざ場所を取る置き方をしなくてもって思います(笑)。あと見て分かるように、同じようなカラーリングのスニーカーもたくさんあるし。ここはいずれ子どもの部屋にするつもりなので、これ以上増やさないで欲しい(笑)」
この膨大な数も、流石スタイリストさんだと頷ける反面、明らかに趣味の割合が大きいのはご愛敬。
そんな“偏愛”部屋の隣には、夫婦共有の衣装部屋が。扉を開くと、古着を中心に取り扱う「OVERLAP CLOTHING」同様、まるでお店のように無数の洋服や鞄、小物などが所狭しと広がる。
そんな衣装部屋の家具選びにも抜かりはない。
部屋の中心に鎮座する長椅子には、飴色の革で作られた箱が。
「50年代頃のイギリスの裁縫箱です。今はアクセサリーや小物入れとして使っています。これ、実は山梨の老舗ウナギ屋の主人がリメイクしてるんです。字面だけ見ると意味分かんないと思いますけど(笑)そこの会長さんがこういったヴィンテージ小物が好きらしくて」
ユニークなエピソードも飛び出し、背景のあるものが好きなryoheiさんらしいチョイスと言える。
ファッションを仕事にする2人ならではの“好き”が詰まった部屋使いで、まるで自宅全体がクローゼットのようだ。
夫婦で切り盛りするからこそ生まれる家族時間
夫婦でお店を営む傍ら、個人でのお仕事もこなす2人。来年には第2子が誕生し、益々多忙になる中で、家族との時間の過ごし方や仕事とプライベートの両立について聞いた。
marieさん「オンとオフの境目はあまりないですね。プライベートでも、お店からの連絡は対応しなきゃいけないですし、旅行に行く際も、旅先だからこそ撮れる素材もあるので常に仕事のことは念頭に置いてます」
marieさん・ryoheiさん「幸いなことにどちらかが家に入れるような働き方ができているので、そこまで育児の負担を感じたことはありませんね。
可能な限り3人で居れるように、お互いが意識しているおかげで、ワンオペも少ないですし。
これも夫婦で一つの仕事を切り盛りしているからこそですね。」
marieさんの撮影の日やryoheiさんのスタイリストのお仕事などをうまく調整し、多忙な中でも家族の時間を大事に過ごしている。
そんな2人のリフレッシュ方法は、数年前から利用しているセカンドハウスのサブスクリプションサービス「SANU」だ。
月額を払えば伊豆や山中湖などのリゾート地の別荘を自由に宿泊できる同サービス。お子さんがまだ小さく、時間がコントロールしやすい今だからこそ過ごせる家族の時間も、お2人にとっては欠かせない瞬間だという。
「素泊まりが多いので、ホテルほど気を使わない点も良いですね。自然が溢れる非日常の環境でも、自宅のように一家団欒の時間を過ごしながら、リフレッシュできます」
と、これまで白樺湖や軽井沢など関東周辺のほとんどの施設を訪れているという。また、八ヶ岳に旅行した際には、インテリアショップを訪れるなど、地方へ足を伸ばしても家具探しに余念はない。
暮らしや働き方の理想
来年には4人家族になるmarieさん・ryoheiさんご夫妻。都内で暮らす上で現在のお家が立地、広さ的には今が一番良い環境だと口を揃えるお2人だが、理想の暮らしについて聞くと、
ryoheiさん「自宅兼ショップが理想的ですね。プライベートと仕事は切り離して考えていないのでそれくらいがちょうど良いかもしれません。訪れたお客様がそのまま宿泊できるようなモーテルみたいな機能もあれば最高ですね」
marieさん「もしお店を誰かに任せられるのなら、地方で古着屋さんとカフェなどを複合した、ライフスタイルを提案できるようなお店作りにチャレンジできたらいいなって思ってます」
仕事とプライベート、そして自宅までOVERLAP(重なり合う)した生活の中で、家族の時間を尊び、“好き”を詰め込み混ざり合った環境で過ごすことは、まさに2人だからこそ叶う暮らしだろう。
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STAFF
[Text]
kohei kawai