一番その人らしさが現れる家の空間。“好き”が詰まった“場”には、ちょっとした工夫や色合わせのこだわりが反映されているはず。
そんなそれぞれ違った個性を持つ家の内装やインテリアについて話を聞いていく企画「イエの探求」。
今回はフリーランス美容師として活動するkananoさんの自宅へ。
美容師業の傍ら、Instagramを中心に発信するハイセンスながらお手本にしやすいヘアとファッションのスタイリングや、感性の詰まったインテリアなどが同世代の女性を中心に支持を集めている。
最近ではYouTubeチャンネルを開設し、一緒に暮らすパートナーとの日常などライフスタイルも発信している。
食指の向かう方へ ジャンルレスな物選び
「インテリアは“ストリート”や“カジュアル”などの既存のスタイルを意識している訳ではなくて。強いて言うならジャンル問わず“綺麗過ぎない”を軸にアイテムを選んでいます。とりわけ褪せた色や質感の雰囲気が好きですね」
kananoさんの家を見渡すと植物の鮮やかな緑と雑貨屋のように隅々に置かれた小物が目を引く。壁に飾られたアート作品のそばにはスケボーが置かれていたり、窓際にはお気に入りのアクセサリーやメガネ、香水などが無数に飾られている。
統一したジャンルに当てはめることなく、自身の好きな物へ自由に食指が動いていく。
「どちらかというと、性別を感じない部屋にしたくて。ファッションもメンズライクだし、そんなスタイルに女性らしいアイテムをミックスするのが好きなので。インテリアも、男女どちらが住んでいても違和感のないスタイリングを意識しています」
初めて一人暮らしを始めた家は、自分の好みが分からず今のスタイリングとは真逆の白一色の女性らしい雰囲気だったそう。そんな経験を通して、自身の“好き”が明確になった現在は、物が増えても根幹のスタイルが崩れることなく、独特のバランスを保っている。
植物はまるでペットのよう 日々の癒しとリズムをくれる存在
くすんだ色味や風合いのある質感のアイテムに囲まれながら暮らす自宅には、それらと相反するように青々しい観葉植物が要所要所に飾られている。
「水をやったり、土を変えたりとお世話する日課が多忙な生活の中で、癒しの時間になっていて。日々成長していく葉や幹を見ていると、まるでペットのように思えてくるんですよね」
パキラやアオドラセナ、モンステラなどの植物は、忙しなく働くkananoさんとって、インテリアという役割を超えて、いつしか心を支えてくれる存在になった。
引っ越してきた当初は、スペースを気にせず比較的大きな植物を購入していたという。
彼氏さんと同棲を始めてから、荷物や家具なども増えたこともあり、インテリアとのバランスを見ながら、小さいサイズ感の植物を中心に選んでいる。
また、日中家を空けることの多いkananoさんの植物選びのポイントは、手間が少なく管理がしやすいこと。
「今は家で過ごす時間があまりないので、育てやすさを重視しました。空間のバランスを見ながら、大小異なる様々な植物を家具や小物の隙間を埋めるように配置しています。観葉植物を植える鉢も、質感や色のトーンなど好みの物が見つかるまで何件もお店を回ったりするくらい、部屋の雰囲気を作るアイテムにはこだわっています」
そのこだわりが見て取れるように観葉植物の鉢もインテリア同様、派手すぎないくすんだカラーリング。
色自体は明るい鉢をチョイスしているが、暗めの質感やトーンで派手さやポップさが出過ぎないように意識しているという。
いくつかの鉢にはカバーをつけたものもあり、ゴミ箱の鉢カバーのアイデアをくれたのは彼氏さん。
「元々、インテリアに限らず好きな物の感性が似ていたので、2人で暮らし始めても部屋のテイストは変わっていません。むしろお互いが良いと思えることを知る機会が増えて嬉しいです」
インスピレーション源のPinterestを中心に、海外のユーザーの投稿を日々チェックして、アイデアを取り入れている。
ひとつの空間に混ざり合うふたつの感性
インテリアのスタイルは、引っ越す家の元々の雰囲気や使われている素材などに合わせて決めるkananoさん。
現在のお家もロフトへと続く階段の木の質感に合わせてアイテムのトーンや色味を合わせている。
普段2人が過ごすことの多いソファ周辺は、暗めの色調のインテリアが多い中で、ポップなカラーのアイテムが並ぶ。
「全体がカラフルだと疲れちゃうので、一番過ごすことの多いソファ周りにだけポップで派手めなクッションや小物などを集めてますね」
ソファを包むラグも存在感のある色味だが、他の“淡”いトーンのアイテムの延長にある “濃”い配色で派手さはあるが違和感を感じさせない。派手な色味も濃淡で合わせることで、スタイリングに統一感を生んでいる。
また、少し視線をあげると壁に飾られた無数のレコードが目を引く。
1990年代〜2000年代初頭のアーティストを中心に、当時のテイストや雰囲気を感じる物をジャケ買いしているという。そんなレコードに混じってローリング・ストーンズやエイドリアナ・エヴァンズ、山口百恵など音楽も家具同様ジャンルレスにピックしている。
「今の物件は壁が薄くて、音量を気にしながらしか聴けないんですけど、お互いの休日前夜にお香を焚いてレコードを流したりしています。中々休みが合わないので休日前の夜は気分を上げて、一緒に過ごせる時間の大切さを噛み締めています」
そんなパートナーとはお互いの休日にドライブデートを兼ねて、都内の気になるインテリアショップや花屋を回るという。
「付き合うまでは決まったお店にばかり通っていました。同棲を始めてからは、駅から離れた場所でもドライブをかねて買い物に行ったり、リサイクルショップとかに大きい家具を探しにいったり活動範囲が広がりました」
ひとつの空間に2人で過ごすようになり、インテリアもお互いの“好き”が混ざり合いながら相互に作用している。
「少しでも背筋が伸びるように、素敵だなって思う物は常に視界に入るようにスタイリングしています。素敵な物に合うような生活をしなくちゃなって。お互い怠惰な人間なので、だらけ過ぎちゃうことがないように、オフ気味のオンというか。意識を高く持てるような部屋をこれからも維持できたらなって思います」
パートナーと暮らす理想の家
「日差しと木の温かみを感じる家が理想ですね。実家がまさしくそんな家だったので」
以前の職場やこれまで住んできた物件も地下や日差しの入りにくいところが多く、日の光の大事さを痛感したという。
「今が昼なのか夜なのか分からなくなってくるんですよね。当たり前過ぎて考えたこともありませんでしたけど、太陽の動きがこんなに精神的に影響してくるんだなって。植物を育て始めてからは、日の光も譲れない条件になりました」
また現在の暮らしになり、叶えたい理想がどんどん膨らんでいっているそう。
「カーシェアで頻繁にドライブデートをしているので、車の購入を検討していて。今後を見据えると大きな駐車場のある平家が理想です。また、彼氏は人が好きなのでホームパーティに憧れているみたいです。今の家はそこまで大きくないので難しいですが、大人数でも手狭じゃないくらいの間取りだと、スタイリングの幅も広がって素敵ですね」
家に彩りと癒しを添えるのは、けして家具だけではない。
植物やその鉢、壁に貼られた小さなポストカードでさえ、自分の好きな物ならばきっとそうなのだ。好きな物と人に包まれた生活の中にこそ、自分自身を表す感性の骨格が見えてくるのだろう。
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STAFF
[Text]
kohei kawai