家を通して暮らしを楽しむ人の、家づくりにまつわる情報を発信。家とライフスタイルの関係性を探り、“好き”が詰まった住まい方を紹介します。
今回は、135坪の広大な土地でドライガーデンを楽しむ茨城県在住のイワブチさん宅を訪問。土地や工務店探しなど家づくりのポイントのほか、目を見張るようなドライガーデンなど憧れを叶える為のヒントを紐解く。西海岸の家をコピー&ペーストしたわけではなく、イワブチさんの独自のエッセンスを加えた、日本版のカリフォルニアスタイルの自宅を案内してもらった。
理想を現実に。10代で憧れたアメリカンカルチャー
10代からファッション雑誌を読み漁り、アメリカンカルチャーに心酔していったというイワブチさん。
いつしか憧れはファッションだけに留まらず、ライフスタイルまでもカルチャーに染まっていく。
「初めはアメカジにハマり雑誌を読みあさっていました。でも、ファッションだけじゃなくて、次第に現地の生活やライフスタイルに憧れが出てきて。こだわるなら “衣” だけじゃなくて、いずれは “住” も。
そんな風に生活できたらなと学生の頃から思いを馳せていました」
東北出身のイワブチさんは、専門学校進学を機に茨城県に移り住み、就職。
同県出身の現在の奥様と出会い、お互いが慣れ親しんだこの地で、2年前に念願のマイホームを構えた。
「カリフォルニアテイストの家にしたいって希望はあったんですけど、当初はすごくざっくりしていて。ディテールやイメージは頭の中にあっても、それがどういった名称なのかも分らず(笑)ひたすらSNSや海外雑誌など見ては逐一検索を繰り返して、インターネットと睨めっこする日々を過ごしながら “理想” を現実化していきました」
家づくりの現実。工務店選びから妥協は許さないこだわり
そうして着実に自宅への “理想” を膨らませていき、満を持して動き出すと一歩目から大きな壁にぶち当たる。
「まず、自分の希望を叶えてくれる工務店が中々見つからずとても苦労しました。おおよその希望は通っても細かい部分で難しいと言われてしまったり、間取りや仕様、例えば取り入れたい照明なども決まっている規格だから変えられないと断れてしまったり」
10代から抱えていた憧れやこだわり。それを叶えるための自宅作りには、基礎となる工務店選びから妥協は許さなかった。
数十件の工務店やメーカーを訪れるが、当初はこだわりを真っ直ぐに反映してくれる工務店にはなかなか出会えなかったそう。
そんな中、知人が建てた家の工務店を紹介してもらったところ、得意とするデザインとイワブチさんの希望が合致したという。
「間取りも自分たちで考えるくらいこだわりがあったし、それこそ照明の位置だったり細かい部分もイメージしていたので、それらを叶えてくれたことが決め手でした。
小下がりの施工を得意としていて、リビングを一段下げることで吹き抜けがさらに生かせたりと僕らの意見を汲んだ上でプロならではの提案をしてくれたのも魅力的でした」
見た目だけじゃない。実用性も兼ね備えたオリジナル家具
イワブチさんのこだわりの一つは家のシルエット。
「よく見る縦長な2階建てではなく、間口の広い横長にしたのも、欧米では一般的な形だから。
日当たりが良い立地を探したので、日差しがたくさん入るように小窓も多くし、ドライガーデンを常に視界に映るようにしています」
北米によく見られる板チョコのようなパネルデザインのドアを抜けると、梁が主張する吹き抜けの仕様。リビング階段と合わさると外観以上に室内が広く、そして明るく見える。
「家内を一望できるように高い吹き抜けになっています。家のどこにいても家族の様子が伺えるのが利点です。
ただちょっと空調が効きづらいのがすこーしだけ難点かな(笑)」
壁に目をやるとアメリカンスイッチだったり、マリンランプだったりと現地感を意識した内装。
また、これだけのこだわりを反映したご自宅。
世界観を作り出す家具にも抜かりはなく、全て工務店の “造作家具” で統一している。
「引っ越す際に買い足す物がないほど、全ての家具を工務店に造作を依頼し、インテリアに統一感を持たせています」
TVボード裏には白レンガがあしらわれていて、生活感を自然に調和。リビングに置かれたL字のソファには跳ね上げ式の大きな収納スペース付き。お子さんのおもちゃなどが収納できるなど、雰囲気に合わせて作られた家具もテイストだけでなく、現実的な機能も備えている。
注文住宅の醍醐味とも言える “造作家具” 。
イワブチさんのように理想をふんだんに盛り込んだ家には、その理想や生活スタイル、雰囲気などを崩さず、テイストを調和し格上げしてくれる “造作家具” が相性抜群だ。
135坪の広大な敷地。未来を想像した土地選び
理想の家づくりを進めていく中で、工務店選びに難航したイワブチさん
現在の土地も半年以上かけて探したという。
「田舎だから土地自体は余っているんですが、何年以上住まないと所有権がこちらに渡らなかったり、宅地申請が受理されづらかったりと購入や建設の条件が難しく、いろんな縛りがありました。
その中でも僕らは100坪以上で日当たりが良い、会社やスーパー、学校への距離が遠すぎず尚且つ静かなエリアなど条件が多かったので家の打ち合わせをしながら同時進行で土地を探しました」
家と遊ぶ。完成のない家づくり
イワブチさんのカリフォルニアスタイルを象徴するドライガーデン。
135坪の広い土地を利用したカリフォルニア西海岸の住宅の庭によく見られるドライガーデンを再現している。
「当初は、家にこだわるなら家を含む敷地全体に拘ろうと始めました。けしてドライガーデンを中心に、このような家の構造にしたわけではありませんでした。あくまで家がカリフォルニアテイストだからそれに合うような庭にしたかったんです。
しかし、横長の土地で日当たりも良好などドライガーデンをするには最高の条件が偶然にも揃っていました」
家の雰囲気に合わせて始めたというドライガーデン。
次第に熱は加速し、スタートから一年ほどでサボテンやアガベなど多種多様な植物が植えられた現在のような姿に。
ドライガーデンを囲むように張り巡らされたアメリカンフェンスや、花ブロックの門柱、植物の合間に置かれたマリンランプ、ドラム缶プランター、ロードサインなどエクステリアにもイワブチさんのカリフォルニアスタイル愛が見てとれる。
茨城県内や群馬、栃木などの都心に比べて比較的土地の安いエリアでは、ドライガーデンを楽しむ人が多いそうで、最近ではこれから始めたいという方やビギナーのユーザーからDMが届くという。
「始めた当初は僕もたくさんの人にDMしていろいろ質問していましたが、いつの間にか僕が教える立場になっていました。手探りで始めた素人が皆さんのおかげで、たくさんの人に見てもらえるようになって嬉しいです。
日々成長し変化していく、ドライガーデンのおかげである意味完成のない家づくりを楽しめています」
今ではInstagramやYouTubeでドライガーデンに関する情報を発信するほか、
北関東を中心に集まったフォロワーさんと交流会や植物の販売会を行うなど、家づくりを目的に始めたドライガーデンも現在では趣味の域を超えてライフスタイルにまで昇華している。
静かな土地で家族とともに未完の家づくりを日々楽しむイワブチさん。
叶えられた理想は若き日に見た憧れを、そのまま大事に抱えていたからこそだ。
家を全力で満喫すること、空間をデザインすることの楽しさをその身で体現するイワブチさん。完工は “完成” ではなく、 “始まり” 。
家が自分に馴染んできた時こそ生まれるアイデアや変化がまた生活に新鮮さや目新しさをもたらしてくれる。
鏡の前で「あぁでもない、こうでもない」と服をあてがったり、試着するように、考えながら空間を編集し、家と遊ぶことは自分だけの特別な時間を与えてくれるはずだ。
2023.12.29
パンクロッカーから花を愛するフローリストへ。 夢の実現に必要だったのは「自分の才能の見つけ方」
2024.07.26
1500年続く名家出身のアーティスト 失望落胆からの10年間 |FIND UNSTANDARD
2023.09.08
海外のエッセンスを詰め込んで。アンティーク家具を中心とした家づくり
STAFF
[Text]
kohei kawai