あなたの “好き”で、暮らしをデザインする「NONDESIGN」。今回お招きしたのは、「フリーランス栄養士」である渡辺友美子さん。自身の経験から「もっと世の中に正しく、楽しい食の知識を広めたい」と心とからだにやさしい食を伝える活動を行っている。NONDESIGNを舞台に、渡辺さんの「食と暮らしにまつわるストーリー」を聞かせてもらった。
フリーランスの栄養士として
高校生の渡辺さんは、食べることが大好きで、将来はカフェで働きたいと考えていたそう。しかしダイエットを始めてからは、カロリーを気にするあまり、炭水化物を抜いたり、食べなかったり。体重は落ちたものの、生理が止まるなどからだに悪影響が出てしまった。
「病院に行ったら『ちゃんとバランスの良い食事をしてください!』ってお医者さんに言われてしまって。我慢のしすぎでストレスも溜まっていたし、肌荒れもひどくて…。きちんと栄養をとらないと、からだにも心にも良くないということに気づきました」
この経験から、「正しい食の知識を伝えられる人になりたい」と、栄養士を目指すことに。社員食堂、病院、介護施設と実績を積み、フリーランスの栄養士となった。
現在は、栄養バランスのとれたお惣菜や、スローフードを使ったスイーツなどのレシピをSNSで発信。「見てくれる人が参考にしやすいように」と、手間がかからず、特別な調味料を使わなくても作れる料理を心掛けているそう。
不定期で開催している間借りカフェ「ゆうのごはん屋」では、緑黄色野菜が摂取できるお弁当や、キャロットケーキなどのビーガンスイーツなどを販売。こうした活動が実を結び、企業とのコラボレーションや飲食店へのレシピ提供など、活動の幅がどんどんと広がっている。
現在は、栄養士の国家資格を習得するため、仕事の合間をぬって、勉強に励んでいる最中。いつかはお店を構え、健康でおいしい食事やスイーツを提供するのも、夢のひとつなのだそうだ。
いつも暮らしの中心に「食」がある
仕事も生活も、今や「食」が暮らしの中心になっている渡辺さん。食の大切さを学び、実践してきたからこそ持つ「マイルール」を聞いてみた。
「食べる量や食事の内容は、自分のからだと対話しながら決めています。時間を決めて食べるというより、お腹が空いたら食べるように。からだの調子が整うので、発酵食品と野菜は、なるべく摂るようにしていますね」
ストレスを溜めないように、食べたいものを食べる「ブレイクタイム」も大切にしているそう。
「普段は栄養バランスを気にして食事を作りますが、たまには、甘いスイーツを食べたり、がっつりした揚げ物を食べたり。食べる日を設定して、『今日は食べるぞ〜!』って、楽しんでいます。我慢しすぎてストレスが溜まってしまったら、逆効果になっちゃうから」
「食生活を楽しむことで、心にもゆとりができると思うんです」と渡辺さん。仕事はもちろんのこと、自分の生活にも密着していることだからこそ、楽しむ気持ちが大切。
「季節のものを取り入れてみたり、スーパーで安いものを見つけて『何作ろうかな?』って考えてみたり。外食した時に食べておいしかったものを、自分なりにアレンジして作ることもありますよ」
実は料理を作るようになったのは、栄養士を目指してから。食べるだけでなく、作ることも好き。食の仕事は、渡辺さんにとって天職なのだ。
料理を作って、お気に入りの食器を選ぶ…すべてが私の“好き” な時間
自宅のキッチンが仕事場でもあるため、近くにスーパーがたくさんあること、料理が美しく映えるための自然光が入ること、キッチンの広さを鑑みて、今のお家を決めたそう。
こうした条件下で選んだのは、レトロ感が漂う団地の一室。昔から古いものが好きという渡辺さんには、木枠の戸棚やクリーム色のタイルが魅力的に映ったそう。そこに北欧テイストの小物やファブリックを置くことで、レトロ過ぎない空間になっている。
マグカップも、イッタラやマリメッコなど北欧のものがお気に入り。マグカップはあえて見せる収納にすることで、インテリアのポイントに。
「お客さんが来たときに『この人ならこのカップかな』と選んでお茶を出す楽しみもあります。イラストレーターの塩川いづみさんが描いた、ゆるかわな犬がモチーフのマグカップもお気に入りです」
食器は撮影にも使用するため、大きさや色、形など多種多様の器を揃えている。
「カラーも形もあえて不揃いにするのが好きです。でも料理の邪魔にはならないように、色ものでもマットな質感だったり、柄が入っていてもワンポイントだったり。あくまで料理が主役になるものを選んでいます」
最近のお気に入りは、「CORELLE」。デザインの良さだけでなく、軽くて割れにくい。レンジも食洗機も対応という、使い勝手まで考えられている器なのだそう。
代官山にある「Allegory HomeTools」のお皿も最近のベストメンバー。グレーのやさしい色合いとマットな質感が、料理のおいしさを引き立ててくれる。もやしのナムルや、玉ねぎの炒め物など色味の少ない料理でも、このお皿にのせるとよりおいしそうに見える。お皿は、渡辺さんの料理の魅力を引き出してくれる大切な相棒なのだ。
<渡辺さんの愛用の食器>※左から
左上・皿:Allegory HomeTools(アレゴリーホームツールズ)
左下・皿:ARABIA(アラビア)
中央・白い小鉢:アンティーク(道具屋のぼり)
右上・白い皿:CORELLE(コーレル)
右下・黒いお茶碗:kuros’(クロス)
箸: ひなたライフ
箸置き:崎陽軒
食を楽しむために、器だけでなく、エプロンや調味料にも渡辺さんのこだわりが光る。
エプロンは大好きなマリメッコ。最近はエプロンにもカラフルさを取り入れて、ハッピーな気分で料
理の時間を楽しむ。
調味料はあえて見せる収納。海外のスパイスはかわいいパッケージのものが多く、ついつい手にとってしまうそう。
キッチンツールや調味料にも、自分の“好き”を取りいれることで、料理の時間がもっと豊かで充実した時間になる。
楽しく、おいしく「食」を伝えていきたい
渡辺さんは、自身で写真や動画の撮影も行っている。いくつものお皿をならべて、おいしそうに撮影するって、意外と難しいもの。撮影するコツをお聞きすると、「空間をあけて撮るようにするといいですよ」とのこと。
「お皿が密集してるとごちゃごちゃ感が出ちゃうんで、写真を1回撮ってみて、お皿と皿の間のスペースを空けるようにしています。1個ずつちゃんと料理の個性を見せることを意識します」
料理の盛り方にも、ポイントがある。
「上から撮ることが多いので、立体的に見えるように、山高に盛るようにしています。あとはレモンを添えたり、料理の色のバランスや配置も気にして撮影していますね」
こういった撮影に力にいれるのも、おいしくたのしく食を伝えていきたいとの想いから。
「最近はレシピ動画制作の仕事が増えたため、レパートリーを増やそうと奮闘しています。動画の視聴者さんからの『キノコを使った料理を教えて欲しい』とコメントをもらったので作ってみたり。みなさんが楽しんでくれたり、参考にして作ってもらえたらうれしいですね」
見ているだけで、ぐぅとお腹の音がなってしまいそうなほど、おいしそうな渡辺さんの料理。インスタをチェックすると、アボガドと塩昆布のサラダやなすのきんぴらなど、「作ってみよう!」と思えるようなメニューが豊富に投稿されている。
NONDESIGNで広がる、新たな夢
今の家もお気に入りだけど、撮影スペースが限られているのが悩みという渡辺さん。NONDESIGNで暮らすなら、「撮影スタジオがつくりたい!」とのこと。3年後には、レシピ本を出版するのが目標なのだそう。
「お庭とか、リビングとかいろんな場所でも料理の撮影がしたい。お皿がいくつか並べられる広いテーブルも置きたいし。お気に入りの器が飾れる透明な食器棚もあるといいなぁ」
理想の家を思い浮かべると、次から次へとアイデアが浮かぶ。楽しい妄想は、尽きることがない。今後は料理以外にも、ライフスタイルの発信もしていきたいと考えているとのこと。
「料理をすること以外にも、ファッションやインテリアなど好きなものを発信したり、料理以外にも心とからだが健康に暮らすための情報を伝えていきたいんです。そのためにも、自分のこだわりの小物や家具を集めた空間をつくりたいですね」
食をおろそかにせず、自分のからだと向き合う大切さを知る渡辺さん。そんな彼女だからこそ、発信できる料理や暮らしのこだわり。そんなこだわりに触れるうちに、きっと「自分も丁寧に食と向き合ってみようかな」と思い直す人が増えていくんだと思う。おいしく、ヘルシーな渡辺さんの暮らしは続いてゆく。
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STAFF
[Text]
YUKARI MIKAMI