家を通して暮らしを楽しむ人の生活のアイデアや家づくりにまつわる情報を発信。家とライフスタイルの関係性を探り、“好き”が詰まった住まい方を紹介します。
今回はイラストレーターをしながら、年間100着以上の服のほか、バッグや靴、アクセサリーなどワードローブのほとんどを手作りしている。さらにソファのカバーを作ったり、カーテンも自作したりとインテリアにもテクニックを発揮。その延長のように自宅の壁や天井をカラフルにペインティングし、柄のある壁紙もフル活用。“好き”を突き詰めた、楽しさに満ちたDIYを実践する津田さんに、そのこだわりについて聞いてみた。
DIYで一軒家を自分たち好みに改装
 
                
             
                
            近所に果樹園や畑がある、自然豊かな東京・世田谷に津田さん夫妻が新築の一軒家を構えたのは4年前。
それまではマンション住まいだったため、当初は中古マンションをリノベーションするつもりで、一軒家を購入するとは考えていなかったそう。
「ただ、猫がいることもあって半年探してもなかなかいい物件に巡り合わなかったんです。そんなときにこの街区を不動産屋さんに紹介されました。分譲のセミオーダー住宅なのですが、価格的にはマンションをリノベーションするのとほぼ変わらなかった。新築なら設備も新しいし、周囲の環境もとても良いので、思い切って一軒家にしてみたら、上下階の音も気にならないし、大正解でした」
けれど、最初はマンションのイメージで壁を明るいグレーの壁紙にしていたが、戸建てだと日の当たらない場所も出てきて、暗いということに気づく。だったら自分たちで塗ってしまおうと壁をピンクに塗り替えたのが、今も続くDIYの始まりだった。
 
                
            リビングの東側の壁をピンクにし、天井はストライプ模様に。それがだんだんと広がり、もとのグレーの壁はもう跡形なく、それぞれの場所に応じた色や柄物の壁紙で彩られている。
「カラフルだとうるさいのではないかと思われがちですが、遊びに来た友人からも、不思議と落ち着くと言われます。また、SNSにもアップしているのですが、海外の方からの反応がとてもいい。日本ではまだカラフルな家に抵抗があるというか、浸透していないけれど、やってみると意外としっくりくるので、おすすめです」
もちろん、1回で成功することは稀。
 
                
             
                
            「サンプルだと小さい面しかわからないので、塗ってみたら何か違う、と。そうしたら、また塗り直します。2、3回やり直すこともザラ。壁用ペンキは『壁紙屋本舗』さんのものがほとんどで、壁紙は海外のものも使っています。これもちょっと雰囲気を変えたいな、と思ったら気軽に張り替えています」
リサイクルショップを巡って、掘り出しものをキャッチ
 
                
            間取りは1階に津田さんの仕事場とガラスの引き戸を挟んでリビングダイニングがあり、2階に夫の書斎と寝室があるというシンプルなつくり。
キッチンは標準タイプだが、吊り戸棚はあえてつけなかった。
「結局、ものをしまい込むだけだし、うちには必要なかった。代わりにそのスペースに好きなものをディスプレイするほうが楽しいと思うんです」
好きなものを飾る、というのは、津田さん夫妻の趣味の一環でもある。2人でよく出かけるのは中古家具店やリサイクルショップ。そこで掘り出し物を見つけるのが、なによりも楽しいという。例えばリビングのソファはイタリアのモダン家具ブランド〈カッシーナ〉のもの。
 
                
            「カバーが汚れていたのですごく安く売られていたんです。そこで、カバーをブルーの布とイギリスのファブリックブランド〈デザイナーズギルド〉の布を組み合わせて自作。他にもソファの前に置いているガラスのローテーブルはドイツの〈ロルフベンツ〉のもの、私の仕事場に飾っているトロフィー形の日本の木彫りの熊は2000円で購入して、ブルーにペイントしました」
 
                
            他にも〈イケア〉のアイテムをうまく活用したり、九谷焼の照明を取り入れたりなど、異なる国や時代の要素を、自分たちの感覚でひとつの空間に調和させている。
ただし、東京発のカラフルの提案として、和のものをところどころ入れることは意識している。そのほかはけっこう自由。近所にたくさんあるリサイクルショップを定期的に巡り、家に合うものを見つけては、少しずつインテリアに取り入れている。
「それでも家にものが溢れないのは、ひとつ増えたら、ひとつ処分するようにしているから。総量が増えないんです。処分も捨てるのではなく、リサイクルショップに引き取ってもらったり循環させている感じ。だから、壁だけでなくインテリアも頻繁に入れ替わります」
 
                
             
                
            決まったスタイルにとどまらず、いろいろ探究しながら、常に流動している。だからこそ、いつでも新鮮なときめきを感じられるのかもしれない。
万全の防犯対策と、窓から見えるグリーンが安心と癒しを育む
 
                
            セミオーダー住宅なので、外観は一見それほど特徴的ではないが、よく見ると細部にまでこだわっているのがわかる。
こだわりの最重要ポイントは防犯に優れていること。夫の職業が市民防犯インストラクターというのもあり、構造的に侵入できない家づくりを目指した。その工夫のひとつは1階に掃き出し窓がないこと。ほとんどの窓はフィックスになっていて、開閉できる窓も面格子が付いていたり、人が入れない大きさにしている。それでも圧迫感がないのは、グリーンの存在も大きい。
 
                
            「隣の家との間は2m程度しかないのですが、そこに植物を配したら隣の建物も気にならないし、部屋の中に木の影も映る。私の仕事場の窓の前にも鉢植えの樹木を置いています。視界がグリーンだけになると、まるで自然のなかで暮らしているような気分になるんです。部屋にも植物を置くようにしていますが、庭とも呼べないほどの狭いスペースでも植物があるとないのとでは大違い。グリーンがあるって、心の安定にもすごく大切なのだと思います」
2階の寝室とつながるバルコニーにも鉢植えの植物を置き、周囲を塀で囲むことで外部からの視線をシャットダウン。椅子とテーブルを置いてプライベートに楽しめるコージーな空間をつくっている。
生活感を出さないのもカラフルを成功させる秘訣
 
                
            ピンクや黄色、水色、ラベンダーなどカラフルという言葉がぴったりな津田邸だが、奔放なだけでなく、抑制も効かせている。
ものを増やさないというのも、そのひとつだし、道具や生活用品を出しっぱなしにしないというのもある。
「ものの置き場所は決まっていて、仕事場のミシンも使うたびに取り出しています。キッチンのカウンターにもお茶道具だけを置いています。不要なものはできるだけ減らし、電子レンジも手放しました」
 
                
            生活感のあるものが目に入らないから、壁や天井がカラフルでもノイジーにならない。2匹の猫がいながら埃ひとつなく、掃除が行き届いているのも快適さの大きな要素だ。
自分たちの好きなスタイルでつくり上げる唯一無二の空間。無難にとらわれず、遊ぶことを恐れず、自分の感覚を信じて心地よさを育てていく。津田さんの家は、その可能性の広がりを示唆してくれる。
 
                
             
          
         
          
        STAFF
[Text] 
        三宅 和歌子
|出版社を経てフリーの編集者に。雑誌など紙媒体を中心に編集・執筆を行う。旅と猫が好き。
        
 
         
             
            