モノの起源を解き明かして、つなげる。インテリアスタイリストの“名刺代わり”の部屋。|イエの探求 | UNSTANDARD(アンスタンダード)
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2025.09.26

モノの起源を解き明かして、つなげる。インテリアスタイリストの“名刺代わり”の部屋。|イエの探求

モノの起源を解き明かして、つなげる。インテリアスタイリストの“名刺代わり”の部屋。|イエの探求

モノの起源を解き明かして、つなげる。インテリアスタイリストの“名刺代わり”の部屋。|イエの探求

 

 

一番その人らしさが現れる家の空間。“好き”が詰まった“場”には、ちょっとした工夫や色合わせのこだわりが反映されているはず。そんなそれぞれ違った個性を持つ自宅の内装やインテリアについて話を聞いていく企画「イエの探求」。

インテリアスタイリストの島さんが、もっか夢中なのフライフィッシング未知の世界で水を得たように、先人たちの背中を追いかけ、全国各地の釣り場へ赴く。「正直、家に帰るヒマさえない」と自嘲するが、アウトドアに向き合って気づいたのは、ほかでもない、インドアの世界で磨いてきた感性や好きこのむモノやムードとの、根深い結びつきだった。

 


自分の家さえ名刺代わりに。

プロのダンサーとして駆け抜けた10代を経て、ひょんなことからインテリアの世界に足を踏み入れ、脇目もふらずその道をひた走ってきた島さん。「ただ向上心感性だけで勝負してきた」と、アンティーク家具を扱う気鋭のセレクトショップでの下積み時代を振り返る。

「いまはスタイリストですが、インテリアについて専門の学校で学んだわけでもありません。ヨーロッパから40フィートのコンテナが毎月入ってくるそのショップで、ひたすら現場仕事をしていた。そしてお客さんにインテリアを提案したり、友人の部屋をスタイリングしたり、『スタイリストです』って背伸びしながら名乗って、とにかく業界に自分を売っていきましたそれで、いまがあるんです」

 

自分の暮らす家さえも、培った知見とテクニックを活かしながら好きを詰め込む、格好の自己表現の場だ。あらゆる実績を“名刺代わり”に、何者かにならねば生きられない業界をかいくぐってきた。それでも苦労をおくびにも出さず、「家っていうものがあったから、いろんなひとと出会えた」と、きっぱり言ってのける。

また、それまで好きだったアメリカのブラックカルチャーに、ヨーロッパのインテリアを結びつける術を体得したのもその頃だった。そのミックススタイルはいまも彼の引き出しのひとつで、そしてときどき、そこにアウトドアカルチャーも混ぜ込む。

 

「山梨の近く、トトロの森みたいなめちゃくちゃでかい山のそばで生まれ育ったんです。自然は、当たり前のように好きでした」

 

島さんが暮らすこの部屋にはそんな遍歴が色濃く表れるが、最近はここで過ごす時間はほとんどないという。じゃあどこへ?といえば、果たして「釣りに」。

 

ここ2年、もっかの関心ごとはフライフィッシングで、生活の中心にして「人生の中心」と言ってのけるほど。なにせプロのフライフィッシャーを目指していて、その一環として近く北海道へ移住するのだと、あっけらかんと笑った。


フライフィッシングの歴史は、家具の歴史と似ている。

「フライこそ生涯できる遊びかもって。人生をかけてやりたいことが、やっと見つかった気がします」

 

仕事そっちのけでフライフィッシングに全霊を捧げ、プロになるため、再びあの下積み時代のように業界に名を売っている最中だという。そんななか気づいたのは、これまで出会ってきたカッコいい大人たち、自らの外見だけではなく、おしなべて住まいもこだわり抜いていることそしてフライフィッシングをしていることだった。その共通項に気づいたとたん、しかるべく、島さんが培ってきた感性や知見との結びつきも見えてきたという。

 

「フライフィッシングはイギリス王室が発祥の文化。それがアメリカに流れていったんですね。それってインテリアの歴史も似ていて、たとえばミッドセンチュリーデザインひとつとっても、それは50年代のヨーロッパで生まれて、その後アメリカのラッパーたちがイームズの家具を収集するなどして、海外へ流出していきました」

フライフィッシングがもたらしたのは、新しい発見というより、さながら、彼の経験に紐づく再発見。それはたとえば、「江戸後期の陣笠にカリフォルニアのオブジェを合わせ、醸し出す空気感を組み合わせるテクニック」では敵わない、心底の“好き”のリンク。パズルのピースが奇跡的にはまったように、そのつながりが、すごくしっくりきているという。


モノの起源を解き明かして、つなげる。

かくして、ヨーロッパのアンティーク家具、アメリカの空気感、そしてフライフィッシングのカルチャー、そうしたさまざまなエッセンスがまじりあう島さんの部屋。いわく、「ぐちゃぐちゃに見えるでしょ? でも面白いでしょ? みたいな感じを目指しています」というように、渾然で一体な空間には、言わずもがなスタイリストならではの工夫も隠されている。

 

「たとえばヒップホップを例に挙げると、発端はアフリカンカルチャーです。アフリカからアメリカへ移民が起こったことによって、ヘイトが生じた。その後70年代にNYで大停電が起き、黒人たちが盗んだ物資のなかにあったレコードをストリートで流しながらパーティーをしはじめた。それがヒップホップの起源。一見つながりがないように見えるモノ同士でも、そうした“発端”をつなぎ合わせると、違和感なく馴染むんです」

さまざまな国や作り手のインテリアが、ひとつの空間のなかで溶け合うゆえんは、そうした脈絡や因果関係を解き明かしているから。だから、島さんがとりわけ好きこのむのは、世界中のフォークアートだったりする。

30年代のセラミック製(木彫りではない!)の熊の置物や、イエローストーン国立公園のトラウトのペイント、西ドイツ産のファットラヴァなど、「とにかく、オリジネーターが好きなんです。ルーツや郷土を辿ることが楽しいし、そこには、ひととひととの想いのつながりがある」と、島さんは部屋に散らばるさまざまなインテリアを見渡。とはいえ、この部屋でやりたいことはもうやり尽くしてしまっていて、いまは次の家のことを考えているらしい。

 


遊び心があるし、雑貨を選ぶセンスが問われそう。

インテリアスタイリストの島さんが、もしもNONDESIGNの家に住むとしたら。じっくりと悩んだ末、「いちばん遊び心があるのは、これかな」と、“OLD AMERICAN”のカルチャーやスタイルが特徴の「NONDESIGN NOA」を選んだ。

「雑貨を選ぶセンスが問われそうで、『遊んでなんぼ』って感じもしますね! やってみたい家です」と、スタイリスト魂をくすぐられた様子。

 

また、幼少期から、実家に友人たちが集まってゆっくりするのが好きだったそうで、「ひとが自然と集まる暮らしになりそうですよね。アウトドアをやるひとにもいいだろうし」と、広々としたガレージスペースにも注目。

 

「アメリカンスタイルの家だから、僕なら、ちょっと西の感じとか、アリゾナっぽい雰囲気を入れてみたいですね。パイン材とかチーク材をベースにするのもよさそう」

 

フライフィッシングという新しい世界との出合いから、ひるがえって、インテリアの世界で得た感性や知見にも立ち返ることになった島さん。より強固な武器をたずさえて、次に向かうのは北海道。トラウトフィッシングのメッカであるその地への移住を、いま本気で考えているという。


NONDESIGN NOA プロフィール

STAFF
[Text]

MASAHIRO KOSAKA(CORNELL)