ギャラリーのように。ものを慈しみながら暮らす京都の家|イエの探求 | UNSTANDARD(アンスタンダード)
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2025.02.28

ギャラリーのように。ものを慈しみながら暮らす京都の家|イエの探求

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ギャラリーのように。ものを慈しみながら暮らす京都の家|イエの探求

 

一番その人らしさが現れる家の空間。“好き”が詰まった“場”には、ちょっとした工夫や色合わせのこだわりが反映されているはず。そんなそれぞれ違った個性を持つ自宅の内装やインテリアについて話を聞いていく企画「イエの探求」。

 

京都の一軒家を自分たちの理想の空間へとつくり上げていったmaakiさんとdaisukeさん。その家には、どこかギャラリーのような雰囲気が漂いながらも、日常の暮らしが溶け込んでいる。住まいに対するこだわりや、変化していく過程について伺った。


人真似じゃない空間づくり

京都の市街地より少し離れた静かな住宅地に、maakiさんとdaisukeさんが住む2階建ての一軒家がある。

 

daisukeさんは以前、勤務先の大阪に住んでいたが、2020年に京都へ移住。子どものころから神社仏閣や古い建物が好きだったこともあり、京都に住むという選択肢が自然と浮かび上がったそうだ。そこで、会社にもアクセスしやすい阪急沿線に思い切って中古物件を購入。maaki さんと暮らすようになり、自分たちの好みにあったリノベーションをすることに。

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daisukeさん「住宅メーカーのドアリノベーション企画に応募し、当選したことをきっかけに、本格的なリノベーションをスタートさせました。ドアを変えるなら壁紙も見直そう、といった流れで、少しずつ住まいのアップデートが進んでいきました」

 

当初はSNSを参考にして、植物を置いたり、ミッドセンチュリースタイルの家具を購入するなど、流行に沿った部屋づくりをしていたそう。

 

maakiさん「最初は満足してたんですけど、少しずつ違和感を感じるようになって。やっぱり人の真似じゃなく、自分たちの感覚に合ったものを集めようと思ったんです」

 

京都のギャラリーや美術館、町家建築を巡るうちに、空間のづくり方や素材の組み合わせに影響を受け、住まいのテイストも少しずつ変化していった。


暮らしの中に「ギャラリー」を

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住まいでありながら、ギャラリーのような印象を受けるリビングルーム。石や陶器などのさまざまな素材のものがオブジェとして飾られている。

 

daisukeさん「自然のものと、人が作ったものをバランスよく配置することを意識しています。例えば、木や土といった自然素材に対し、ガラスやアルミといった人工素材を組み合わせることで、空間に独特の調和を生み出せるように。部屋のエリアごとに作品をつくる感覚で配置を考えています。何をメインに見せるのか、そのシーズンごとに変えていくこともありますね」

ギャラリーや美術館、ポップアップイベントを訪れることも多く、そうした空間づくりの工夫に強く影響を受けている。限られたスペースの中で洗練された表現がなされており、「住まいでもこうした見せ方を取り入れたい」と思うきっかけになったという。

 

maakiさん「京都のギャラリーは、昔のものと今のものを融合させるのがとても上手で、そこから学ぶことが多いんです。ハイブランドのポップアップでは、町家を活かした空間やディスプレイの方法、無造作に置かれた石ひとつにしても計算された演出があって、それを住まいにも反映させたいと考えるようになりました」

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そんな考えのもと、部屋を使い分け「見せる要素」を取り入れている。1階のリビングダイニングはギャラリーのような役割を持たせ、自分たちが楽しめるディスプレイを意識。2階は子ども部屋や猫のためのスペース、ファミリークローゼットを配置し、機能的に棲み分けをしている。単なる住まいではなく、暮らしながらも視覚的に楽しめる場として、細部までこだわりを持ってつくりあげた。


未来に残るものを選ぶ

家具やインテリアの選び方にもこだわりがある。特に作家ものの家具や器を好み、一目惚れしたものを少しずつ集めていくスタイルをとっている。京都のお気に入りの店でオーナーから紹介されて購入に至るものも多いそう。

京都の『TORINOKI FURNITURE』も足しげく通う店の一つ。

 

maakiさん「今年購入したお気に入りのひとつがテーブルなんですが、もともと什器として使われていたガラスの台に、一枚板の天板を組み合わせたものです。TORINOKI FURNITUREにお願いして、理想のサイズや形、色味の好みの一枚板を探していただいていたんですが、そんな中で什器として使われていたガラスの脚に出会い、一目惚れしました」

 

ガラスとのバランスを見ながら木を加工してもらい、オリジナルのテーブルが出来上がった。

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daisukeさん「正直、食べにくいんですよ(笑)。京都の蕎麦屋『suba』でも大きな陶芸作品がテーブルになっていて、“アートの上で食事をする”というコンセプトなんですね。僕もそれに共感していて、生活のしやすさより魅せる意識を大切にしたいと思っています」

 

そうした意識からあえてリビングにソファを置かず、自分を整える機会にしている。代わりに置いているのは作家・永瀬二郎が手がけた「Clockwise from Top Right」というアルミの椅子。

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daisukeさん「ダラダラすると運動不足にもなるし、暮らしのリズムも崩れる。寝たくなったら、ベッドへ行けばいい。それくらいの線引きをすることで、生活にメリハリが生まれるんです」

 

また、お気に入りのショップとして、ギャラリーを兼ね備えた日本茶専門店YUGEN作家もののうつわのお店monotsukiなどの器を扱う店をよく訪れる。オンラインで購入することもあるが、実際にお店でオーナーと話しながら選ぶ楽しさも大切にしている。

 

maakiさん「器は一つずつ買うようにしていて、食事のときは、あえてバラバラの器を使うようにしています。お茶を飲む時、晩酌をするとき、和菓子を食べる時…それぞれのシチュエーションで使う器が違うので、選ぶのがとても楽しいです」

 

daisukeさん「購入した作家さんの作品は、今後さらに評価されて価値が上がっていくと思っています。良いものを先物買いする、そんなワクワク感もあるんですよね」

時間が経つほど愛着が増し、価値が生まれるものを大切にする。それが住まいづくりの根底にある考え方なのだ。


京都で描く理想の暮らし

憧れていた京都の暮らし。今の家も気に入っているが、将来的には歴史のある建物を活かしながら、自分たちの暮らしに合った空間をつくりたいと考えているそうだ。

 

daisukeさん「最終的には、町屋のような歴史ある空間に住みたいという気持ちがあります。やはり新しいものがすべてではなく、何百年も前から残り続けているものこそ、本質的な魅力がある。実際に住むことで建造物の価値や歴史を感じてみたいです」

maakiさん「本来なら中庭をつくりたいのですが、今はスペースの広さや維持の面で難しさもあるので、町家や古民家などに住みながら、これまでとはちがったスケールで自分たちの理想の住まいをつくってみたいですね」

京都の人やものと触れ合い、形づくられてきた住まいと暮らし。少しずつ手を加えながら、自分たちらしい空間へと育ててきた。新しいものと古いもの、洗練と素朴、二人の感性を大切にしながら、これからも家とともに暮らしを深めていく。

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ギャラリーのように。ものを慈しみながら暮らす京都の家|イエの探求

STAFF
[Text] YUKARI MIKAMI