「スペースエイジ」を高濃度で詰め込んだ“だけ”のワンルーム|イエの探求 | UNSTANDARD(アンスタンダード)
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2025.05.23

「スペースエイジ」を高濃度で詰め込んだ“だけ”のワンルーム|イエの探求

「スペースエイジ」を高濃度で詰め込んだ“だけ”のワンルーム|イエの探求


 

一番その人らしさが現れる家の空間。“好き”が詰まった“場”には、ちょっとした工夫や色合わせのこだわりが反映されているはず。そんなそれぞれ違った個性を持つ自宅の内装やインテリアについて話を聞いていく企画「イエの探求」。

 

70年代前後のアメリカで勃発し、いまなお世界中の多くのひとを魅了するムーブメント「スペースエイジ」。本田さんもそれに傾倒するひとりで、その界隈では珍しい弱冠26歳にして、通たちも驚く“小宇宙”を、このワンルームにつくりあげる。そのいきさつや発端、スペースエイジの魅力、部屋づくりのヒントや理想の住まいについて聞いた。


昭和から“宇宙”へ。

さかのぼると幼少期から工作が好きな子どもだったと、本田さんは振り返る。家具・インテリア好きの両親のもとで育ったこともあってか、なにかをつくったり集めたりすることが、人並み以上に好きだった。

本田さんの昭和レトロコレクション

中学時代にのめり込んだのは「昭和レトロ」。「中学生にして昭和レトロに興味を持つとは……」と驚くが、実際のところも、まわりに近い趣味の友人はおらず、ひたすら近所のリサイクルショップをまわったり、メルカリで探したりと、ひとりでぐんぐんのめり込んでいったという。

 

「大学時代になると、もうわりと集めきった感じがあって」と、やわらかくも豪語する本田さん。それだけ長きにわたって熱中したことを思えば、さもありなんと頷ける。そして、ちょうど昭和レトロがブームにもなりかけていたその頃、それを少し引いて眺めていた矢先に、劇的な出逢いが訪れた。

 

それは、かなたの宇宙から飛来した円盤型の小さな船。もとい、世にもユニークなデザインのレコードプレイヤーだった。

「レコードを再生するためだけの機械なのに、どうしてこんなデザインなんだろうって、すごく面白く思ったんです。無駄にコストのかかる丸いフォルムとか、凝ったスイッチ類の“メカ感”とか」

 

それは、70年代前後のアメリカという“かなた”からやってきた。宇宙開発への憧れから興ったムーブメント・スペースエイジの流れを汲んで生産された「ウェルトロン」という日本製レコードプレイヤー。そこから、本田さんの人生は大きく舵を切った。


好きを積み重ねた“結果、こうなった”。

「この価値を知らないひとが、メルカリで2000円で出品していたんです。本来なら2、30万円はする完品状態でした」

 

そのレコードプレイヤーをきっかけに、たちどころにスペースエイジへの興味がもたげ、いまや、スペースエイジを知らないひとでも「見ればわかる」ほどの凝縮された世界観を、ワンルームのこの住まいにつくりあげる。

 

とりわけ夢中になっているのは、スペースエイジの火付け役としても知られるデンマークのデザイナー、ヴェルナー・パントンのプロダクト。いちばんの宝物は、壁にかけられた「リングランプ」だという。

 

「パントンを代表する作品で、とても割れやすいこともあって、現存するのは日本にもわずか数個。コレクターたちの憧れです」

また、幼少期から研鑽を積んだ工作の腕前を、いまフル活用していて、破損してしまった家具をスペースエイジ風に修繕するのもお手のもの。写真の棚もそのひとつで、紫色のプラスチック板を熱で成型し、スペースエイジ特有の丸みをそなえた抽斗をこしらえた。

一風変わった形や素材、色遣いが満載のスペースエイジの家具・インテリアだけに、部屋づくりはさぞ難しいものだろうと想像するが、本田さんは「まったくそんなことないですよ」とさらり。

 

「丸みのあるフォルムとか、プラスチック素材とか、どのプロダクトにもデザインの統一感があるので、難しいことを考える必要はなくて。本当に、好きなものを集めて置いただけなんです」

興味の赴くまま、わき目もふらず、好きを積み重ねた“結果こうなった”。部屋づくりのノウハウを問うなんて野暮なくらい、本田さんの足跡がただ詰まっている。


スペースエイジ特有のカラーパレットを許容する、空間の工夫。

とはいえ、本田さんの部屋にもいくつか特徴がある。そのひとつが、きっぱりと決められたカラーパレットだろう。いわく、オレンジ・白・紫の3色しか置かないことをモットーにしている。

 

オレンジや紫といった、日本の賃貸家屋には馴染みにくそうなイメージのその色の組み合わせには、どこか昭和レトロにも通じる懐かしさが漂う。また同時に、この部屋にはそんなカラーパレットを許容する懐の深さもあるようだ。

 

たとえばクローゼット。暗い茶系の色だった扉が気に入らず、全面にカラーシートを貼り付けた。

「部屋のなかで面積の大きい部分をこんなふうにするだけで、空間の印象ってガラッと変わるものなんです。賃貸に特化した壁紙材を扱う『壁紙屋本舗』などを活用するのもいいと思います」

 

壁と床の境目に取り付けられた「巾木」も意外と盲点で、それを壁色と統一することで、かなり垢抜けた印象になるという。

 

こちらは、ヴェルナー・パントンの「ファブリックパネル」をモチーフに、本田さんが自作した。パントンデザインのテキスタイルを入手したため、ホームセンターで揃えた材料で簡単な木枠をつくり、巻きつけただけだという。ただ壁に貼り付けるのではなく、ひと手間加えて立体的にすることで、とても気の利いたインテリアになる。お気に入りの手ぬぐいなどを使って真似してみるのもいいかもしれない。


コレクター同士の交流が生まれる、理想の住まい。

インスタで知り合ったスペースエイジのコレクターとは、いまは毎週のように互いの部屋を行き来し、情報交換や談義を交わす友人同士。スペースエイジを専門に扱うショップにもいまでは知り合いが多く、先人たちの住まいを見学に行って刺激を受けたり、本田さん好みの家具・インテリアを譲ってもらったりしているという。

 

「とくに専門店は、“一見お断り”みたいなところも多いんです。でもだからこそ、同じ趣味を持つひと同士で交流して、モノを集めたり、魅力を語り合ったりするのが楽しい。スペースエイジ好きの先輩たちには、だんだん手放していきたいというひとも多いんです。そういうひとたちは、メルカリで高く売るよりも、価値のわかるひとに手渡ししたいというこだわりを持っています」

 

いちど本田さんのようなスペースエイジな空間をつくってしまえば、インスタで見かけたひとや、本田さんの趣味を知る知人たちから、耳寄りな情報が自動的にこぞってくるのだという。

 

かくして、本田さんの理想の住まいは、たくさんのコレクターたちとの交流が生まれる“風通しのいい”家。たとえば、NONDESIGNシリーズ「HYGGE by Home Landick」のような住まいがベースなら、好きに囲まれ、大切なひとたちと心地よく過ごせそうだ。

NONDESIGNコラボレーションシリーズ「NONDESIGN HYGGE produced by Home Landick」

「まず、LDKにはいまの部屋の世界観をそのまま詰め込んで、吹き抜けにパントンの巨大な照明を吊るして」「ひと部屋は、工具やミシンを揃えた作業場に」「あえて寝室だけ昭和レトロな感じにするのもいいかも」「一回やってみたいのは、部屋ごとに違った色で縛ること」「ファサードは逆にシンプルな白がいいかも。でも窓のサッシは極力細くして、大きな窓から室内がしっかり覗けるようにしたい」……と、次々と広がる想像も、これまで見てきた友人・知人の部屋づくりや、パントンをはじめとした有名デザイナーたちの空間づくりがインスピレーション源だ。

中学時代、昭和レトロをひとりで黙々と突き詰めていた頃とは打って変わって、いまは、コレクターの友人・知人たちに囲まれ、その関わり合いごと楽しむ本田さん。理想の住まいなら、その楽しみは加速度的に広がるに違いない。

「スペースエイジ」を高濃度で詰め込んだ“だけ”のワンルーム|イエの探求

STAFF
[Text]

MASAHIRO KOSAKA(CORNELL)