独自の考えや個性をもつ人に「人生」と「暮らし」の二軸からの深掘りをしたインタビュー「FIND UNSTANDARD」。
世間のスタンダードからは少し離れ、これまでにない価値観に触れることで、自分自身のアンスタンダードを見つけよう。
昨年、地元大阪から上京しひとり暮らしを始めたSO-SOさん。
東京生活に慣れてきた今日、今までのバックグランドを紐解きながら楽曲制作のほか、「目立ちたがり」だという自身の服装や物選びのこだわりなど、これまでフィーチャーされてこなかった彼のライフスタイルについて話を聞いた。
目立ちたがりの脇役から世界へ
「今思うと内気で泣き虫な幼稚園児だった」と幼少期を振り返る。小学校に入学すると同時に、それまでが嘘のように明るく目立ちたがりな性格に。
「周囲の誰よりも目立つにはTVに出ることが一番の近道だ」と、両親に頼み込んで自ら劇団に所属。
目立ちたがりの少年の思惑に反して、高校卒業で劇団を退所するまでの11年間、一度も主役を演じることはなかった。
「いつも演じるのは、素朴で質素な脇役や名前もないようなエキストラの役ばっかり。そんな現実と役者として自分の存在価値に悩んでいた頃に出会ったのが、ヒューマンビートボックスでした。中学・高校時代とすごくハマってはいましたけど、あくまでビートボックスは“趣味”って感じでした。
マルチタスクがめちゃくちゃ苦手で、一つの事にしか集中できない性格なんで、高校卒業と同時に約11年間所属した劇団を辞めたことで、ヒューマンビートボックスに没頭していきました」
その後、地元大阪の音楽大学に入学し、音楽を理論的に学ぶ。そんな中、プロとして生きていくことを決心する転機が訪れる。
ヒューマンビートボックスの世界大会の一つ「GRAND BEAT BOX BATTLE 2019(以下、GBB)」出場だ。
トーナメント1回戦目は前年度王者とのバトル。
対戦相手が発表された時点で「正直、あぁ終わったなって」愕然とし、勝負する前から負けを確信したそう。
世界的には無名な極東の青年にとって余りにも酷な組み合わせ。
一方で、これまでの人生を脇役として過ごしてきたSO-SOさんにとって、世界の舞台で主人公になる、千載一遇の機会でもあった。
そんな中で青年は、下馬評を覆し前年度王者に勝利する番狂わせを起こす。
その後も世界的トッププレイヤーたちを打ち破り、日本人初のループステーション部門TOP4入りし、爪痕を残した。
「GBB 2019」一回戦の動画は9月現在で2000万回以上再生され、「優勝するに越したことはないが、それ以上に、誰よりも目立つことを考えていた」という言葉の通り、たった一晩で世界にその名を大いに知らしめた。
後の2021年には別部門で優勝し、世界一の称号を手にする。
かつて趣味だったビートボックスはいつしか仕事に、そして目立ちたがりの少年を世界に羽ばたかせる翼へと昇華した。
・Grand Beatbox Battle 2019〈Swissbeatbox〉
ポップな見た目と色使いのマイルール
世界的な評価を得たことで企業とのタイアップやアーティストのコラボも増加。
昨年、活動の幅を広げるために大学卒業まで過ごした地元大阪から上京した。拠点を移したことを機にひとり暮らしを始める。
制作と生活を兼ねる部屋を探す中で、譲れない条件は自由な制作環境だった。
「集中すると時間も忘れて、没頭してしまう」という自身の性格を考慮して、深夜でも周囲を気にせず制作に打ち込めるように防音室を備えた家を選んだ。
機材やマイクにもこだわるガジェットオタクでもあるSO-SOさんは、“健康と効率化”をテーマに、スマートスピーカーなどの家電で不要な労力を減らし、制作に集中できる環境を整えている。
また、日本のビートボックス界のパイオニアであるHikakinさんの言葉を引用して「その時買える値段の範囲で、一番良い物を選ぶ」ように心がけているという。
その言葉を受けて、最近ではフレキシスポットの昇降デスクとハーマンミラーのセイルチェアを購入。
一日の大半を過ごす机と椅子には、体に負担のない機能性を求める。
SO-SOさんといえばアニメやゲームを想起させる音やカラフルな服装なども特徴的。
海外では親しみを込めて『のび太』と呼ばれることもしばしば。大きな丸メガネやおかっぱのヘアスタイルは、海外から見た日本人のイメージを強く意識しているという。
ナードなオタク感やアニメ・漫画的なポップカルチャーを感じさせる見た目だ。
目立ちたがりというように一見ただの無秩序な派手好きにも見える一方で、実は本人なりの色使いのこだわりがある。
茶色や紫、カーキなどの間色ではなく赤や青、緑といった原色で尚且つ4色以上配色された物を着るのがマイルールだという。
「どっちつかずな中途半端な色が好きじゃないんですよね。何事もはっきりしている方が好き。
家具もカラフルなものが欲しいんですけど、そこそこ値段のするブランドだと、そんな派手な色は作ってないんですよね。セイルチェアも好みの色にカスタムオーダーできるって聞いたんで、青色にしようと思ったんです。
そしたら手元に届くまで半年以上かかるって言われちゃって。泣く泣く既存のブラックフレームを購入しました。
まずは生活環境を整えなきゃいけないから、部屋の壁や床の色に合うように黒や白の家具を選んでいます」
と様々な事情を鑑みた結果、自身の装いや好みに反してモノトーンを基調としたシックな部屋づくりに。
「集中力を高める作用があるという理由で、大阪のスタジオの壁一面を青色に塗りつぶしたりカラフルな物を置いたりしてました。
妥協して選んだつもりの家具はモノトーンで全然カラフルじゃないですけど、落ち着いた部屋でこれはこれで悪くないかなって(笑)」
と初めてのひとり暮らしで気づかされたこともあるようだ。
住環境の変化で得たインスピレーション
最近では「簡単に見えて、いざやってみると思っていたより難しく、日に日にハマっていった」と自炊の楽しさに目覚めた。
「空気の循環があまりできていないのか、焼きそばを作った時に換気扇から排出された空気が、各部屋に流れて家全体にソースの匂いがして最悪でした(笑)」
というエピソードも。そんな生活から生まれた楽曲『tomato pasta』では、24歳の青年のリアルで初々しい生活感が垣間見えるなど、生活環境が変わったことで楽曲作りにも変化が生まれているようだ。
SO-SOさんの楽曲は、自身で発する音以外にも環境音が多く用いられるのが特徴だ。
タクシーの屋根を打つ雨の音や、雷雨など日々の生活の中でピンときた音をボイスメモに無数に取り溜めている。
上京後はお台場や豊洲などからインスピレーションを受け、工業地帯の無機質さを表現した楽曲など新しい土地で得た感覚が楽曲に反映されている。
また制作に行き詰まると散歩に出かけたり、自然の多い公園などで周囲の音に耳を澄ませながら過ごしたり息抜きをしながら、オフ中も楽曲制作のヒントを探すなど、抜かりはない。
「地方と都会では聞こえる音の数も種類も全く違う。
例えばカエルや鈴虫の鳴き声は、都会ではほとんど聞かないですよね。上京して色んなことに気づかされるし、フレッシュな気持ちで生活できてます。
最近では、以前より海外に滞在する機会が増えてきて、踏切や救急車、お会計時の電子決済の音など日常生活で聞こえてくる音が日本とは全く異なることにも気付きました。
海外にいるだけで、新鮮な音やインスピレーションをたくさん得られますね。海外に行くと日本の生活環境の快適さに気付くし、日本での生活が性に合ってると改めて感じます。
ただ向こうでは、行き交う人たちが服装や見た目など自然と褒めてくれるから、目立ちたがり屋の自分としては、そういう文化は、とても素敵だなって」
オンオフ関係なく常にアンテナを張り、日本だけではなく海外の文化や環境で経験するインスピレーションがあるからこそ、良い楽曲づくりの源になっている。
行動の原動力は素直な感情
最後に、自分の存在に思い悩んでいた時期を経て、世界の舞台で活躍するアーティストとなったSO-SOさんに一歩踏み出すコツを聞いてみた。
「何事もすぐやることが大事だと思っています。
目立ちたいってだけで所属した劇団でもたくさんのことを得て、今の自分の糧になっていますし、ヒューマンビーボックスだってそう。大切なのは自分の感情に従うこと。興味があることへのアクションはとにかく早い方がいいです。
僕はそういったことには5秒以内で行動するように意識しています。脳がやらない理由を探し出す前に行動してしまえばいいんです」
感情に素直に生きることで、自分の居場所を切り拓いてきたSO-SOさん。
周囲の目や意見ではなく常に自身の気持ちと向き合い、時に思い悩み立ち止まることこそが、生きていく上で大事な瞬間の一つなのだと思う。
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STAFF
[Text]
kohei kawai